御他聞に漏れず連日オリンピック中継にかじりついています(笑)。ミーハーと言われ様と4年に1度の祭典はしっかり楽しもうかな?と。商業化が進んでいるとはいえやはりアスリートが最も注目を浴びる晴れの舞台での真剣勝負は感動させられます。
中でも柔道が個人的には毎回一番の楽しみ。僕が最初にしっかり見たオリンピックはロサンゼルスなんですが(モスクワは日本がボイコットしてたし)、やっぱり山下選手の悲願の金メダルは感動しました。思えば人生最初のスターは山下さんだったような気がします(もしくは馬場さん)。それもあってかオリンピックといえば柔道というイメージが染み付いています。 今回も初日から最終日までしっかり楽しませてもらいました。楽しめない苦しい闘いも多かったですけどね(笑)。 男子はおもわしくない結果でしたが、これが今の現状だと思う。大会前は確実に金メダル取れるような大本命は男女ともいなかったわけだし。ある程度予想できる結果だったかな、と。ただどうしても気になったのは国際ルールでは先に先に仕掛けないとどんどん反則とられてしまうということは今や僕らのようなお茶の間ファンでも分かっているのに、それでも攻め手が遅いよなー、と。だって選手はあれだけ苦労してあの舞台に上がってきてるのに指導ひとつの差で負けるなんて悔やみきれないでしょう。それでも指導のビハインド負いながら闘う選手が多いという事実を考えると、素人考えとはいえ日本柔道は変わってくれなきゃいけない部分にいい加減手をつけなくちゃいけないんじゃないの?と。
そんな中で金メダルを取った内柴選手と石井選手は最初から最後まで集中して攻めきった感じがしましたね。内柴選手はパワフル且つうまさが光りましたね。まず両袖を取って振り回し多彩な攻めに繋げる。相手が的を絞りづらいこともあってうかつに動けませんでしたね。あと意外と引き込み気味の巴が多かったじゃないですか?一見すると「あんまりやりすぎると掛け逃げとられちゃうんじゃないの?」と感じてたんですが、実はほとんどの試合、この巴でポイント奪ってるんですよね。うまいよな〜って感じました。しっかりポイントが取れる技だからこそ審判も掛け逃げ取りづらい。しっかり取る時は取る、危ない時は誤魔化せる、頂点を極め苦しい時期も経験した実力者だからこそ使いこなせる「業」だよなー、と感心しましたね。
そして遂に石井選手が頂点を極めてしまいました。正直国内での闘いぶりを見る限り厳しいんじゃないかな、って思ってたんですが、私の見る目がなくてよかった(笑)。 今回の石井選手の挑戦はもしかしたら日本柔道変革の分岐点になるんじゃないかと思っていました。日本人選手が一本にこだわらない国際式スタイルで闘って果たして体力・骨格で勝る外国人に果たして通じるのか?果たして終始攻め続ける姿勢を見せることができるのか?しかも最重量級で?
見た印象では今大会最も危なげない試合を見せたのが石井選手だったように感じます。たしかにひとつひとつの技だけ見ればキレという部分で近年の同級の第一人者だった井上、鈴木、篠原らと比べ劣る感じがしました。でもとにかく先に先に仕掛けるし、攻めが止まらない。いわゆる掛け逃げのような力のなさは感じないしっかりとした攻めだけに相手が引き気味になってしまう。そして先にポイントを奪ってプレッシャーをかけ相手が辛抱しきれずに出てきたところを再び倒し、止めは寝技という磐石の攻めは、これが本当に五輪初挑戦の21歳の若者なのか?という完成度でした。
斉藤総監督が脱帽するほどの練習量で培われたスタミナは後半になると確実に動きが止まってくる欧州重量級選手には脅威で、石井より一回り以上大きい彼らが特に後半はなされるがままになり、わかっちゃいるが動けない、という雰囲気でした。オリンピックで完勝し続けた石井。僕が今までオリンピックで見てきた金メダリスト達が感じさせてくれた「凄み」を彼にも感じることが出来ました。
彼の出した結果によりおそらく日本柔道にもなんらかの変革があるだろうと思う。「勝つ柔道」は攻め手が遅いと言われる日本柔道の難点にメスを入れるかもしれないし、今後世界と闘う上で絶対に必要な要素だと思う。ただ心配なのは「形だけの石井」が増えるのではないか?ということ。石井の脅威のスタミナ・肉体・精神力なしに「ただ手数を出せばいいんだ」「一本が取れなくてもいいんだ」という考えは危険すぎるし、無謀だと思う。やはり日本柔道の最大の持ち味は技のキレとスピード、これに変わりはないと思うから。日本選手のキレが恐いからこそ外国勢は組まない、掛け逃げ、パワー柔道、変則組み手といった対抗策を練ってきた。キレを失った日本に外国人が何を恐れるのだろう? あくまで石井が示してくれた結果は可能性であり、ヒントだと思う。キレとスピードを失わずに攻め続けるスタイルの共存。今回の男子メダル過去最低数という結果と石井の新・日本スタイルの成功は両極端な出来事ながら絡めて考えなければならない北京で生まれた事実なんだろう。
最後になるが数々の爆弾発言を生んできた石井だがすごく納得させられた言葉がある。 「内容は王者になってから考えればいい」。 その通りだと思う。一本を狙いにいく柔道はたしかに美しい。しかしそれがポイント取りの柔道のために封じられてしまうような代物なら、言葉は悪いが実践に使えない曲芸と変わらないと思う。「やりたい理想があるならばまず結果を示せ、すべてはそれからだ」ということなんだろう。 石井の言葉は結果を出せなかった選手よりも、海外柔道を批判したり、それに負けてしまう日本選手に苦言を呈すだけで明確な打開策を打ち出せない指導者・首脳陣にこそ頭に入れておいてほしい。
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